眠りの森のシンデレラ
「で、どういうこと!」
「私も知らないわよ!」
キッチンでヒソヒソと話をするのは、薫と登麻里。
「私だってビックリしたわよ! 調べものをしようとネットを開いたら、いきなり琶子が出てきたんだもの」
「まぁ、琶子だと分かっている我々しか、誰だか分からないけど……」
それにしても、と薫は画面を見ながら、綺麗ね、と呟く。
薫が見ているのは、琶子のマリー・アントワネット姿だ。
「顔は仮面で隠れているけど……ねぇ、このマスケラ、素敵だと思わない?」
「それは私も思った。衣装も高価なものよ」
論点はどんどんズレ、「そう言えば」と薫がパッと顔を輝かす。
「明後日、ハロウィンじゃない。仮装パーティーしましょう」
「あら、いいわね」
「その時、琶子にこの衣装を着てもらおう! きっとクローバーのことだから、貸衣装じゃなくオーダーメイドよ」
薫の感は正しかった。現在、この衣装はクリーニングに出されているが、本日夕方には琶子宛に宅配で届く。琶子はそのことをまだ知らない。