眠りの森のシンデレラ
スキャンダル発生から半月過ぎても尚、騒ぎは鎮火せず、逆に過熱の一途を辿っていた。
何故なら、マリー・アントワネットと抱擁女が、同一人物だということが世間にバレてしまったからだ。
リークしたのは……恐らく市之助だろう、とクローバーの面々は思っていた。
「愚かな人間もいるもんだね、嘘なんてすぐバレるのに」
謎の抱擁美女探しに躍起になっていたマスコミは勿論、自分がその美女だ、と名乗るたわけ者まで現れる始末だ。
裕樹は手にした数冊の週刊誌をバサバサッとテーブルに置く。
一番上に乗った雑誌の見開きには『抱擁美女を探せ! 本物は? 有力候補二十八名』の大見出し。
「美女探し、クイズ番組以上に盛り上がっているらしいよ」
「シークレットでも話題だ。何故かアッパークラスが躍起になって探している」
「それをネタに、超富裕層の清に取り入ろうと思っているんじゃないの?」
裕樹の言葉に、則武は、嗚呼、さもありなん、と頷く。
「まっ、このままいけば、イベント大盛り上がりだね」
「全くだ! これも全て清のお陰だ!」
裕樹も則武も大はしゃぎだ。
「お前たち、暇なのか?」
だが、清は自室で寛いでいるところを、悪友の奇襲に遭い辟易していた。
「暇じゃないけど……ねぇぇぇ」
裕樹が則武と顔を見合わせ、二人はニヤリと笑う。
「今の僕たちは、清の行く末を見届けることも仕事の一つとなっているんだ」
「そう! お前の動向一つで株価が大変動する。お前を見ていたら損はしない」
則武の言葉に、付き合い切れん、と清はカウチソファーに横になり目を瞑る。そして、思い出したように言う。
「もうすぐ、琶子が来る。だから、お前たちはサッサと帰れ」