眠りの森のシンデレラ
「エッ! この波瀾真っ只中、呼び出したの?」
まさか、ここまで天然とは……裕樹はポカンと口を開く。
いくら何でもそれは無謀だ……則武は呆れ返る。
「悪いか? 忙しくてしばらく会えなかったからな」
清は世間の騒ぎなどどうでもよかった。ただ、会いたいと思ったから連絡した。そして、それに琶子は応えてくれた。それだけで気分が良かった。
「アイツも図書室で本が読みたかったそうだ」
則武は清の口調に嬉しさを感じ取る。だが、違和感が沸き、それを口に出し問うてみる。
「もしかして、琶子先生の訪問目的は、清じゃなく本?」
裕樹は、ああ、あの琶子ちゃんのことだ、それも有り得る! と大きく頷くが、清はそれを全否定する。
「馬鹿か! 俺に会いに来るのが第一の目的だ!」
ガバッと起き上がると「帰れ!」と怒りの篭った眼でドアを差す。と、同時にトントンとノックの音が聞こえた。
「入れ」と清が言うと、ドアが開き、おトヨさんが深くお辞儀する。
「琶子様がいらっしゃいました」
おトヨさんが横にズレると、琶子がにこやかに顔を出す。
「ごきげんよう。お言葉に甘えて、本を読みに参りました」
琶子の第一声で、則武も裕樹も、ほらね! と清を見る。