眠りの森のシンデレラ
あの人は何を怒っているのだろう?
琶子は、先日と同じソファーに座り、読みたかった本を読み進めていたが、フト現実に戻り、清の態度を思い出す。
清の部屋から、そそくさと逃げ出すように帰って行った、則武と裕樹の姿も琶子は気になっていた。あの時、裕樹がおトヨさんに何か耳打ちしていたが……。
そう言えば……と琶子は思い出す。
清の部屋のテーブルにあった週刊誌。見開き部分にあのパーティーの日の写真が載っていた。
あの記事のことで怒っているのだろうか?
今、清はここにはいない。仕事が残っているから、と琶子をおトヨさんに預け、自室に閉じ篭ってしまったのだ。
おトヨさんは慣れたもので、顔色一つ変えることなく、「清様のことはお気になさらず、存分に読書をお楽しみ下さいませ」と琶子を図書室に案内し、付け加えるように、「拗ねていらっしゃるだけですから」と意味ありげに言って立ち去った。