眠りの森のシンデレラ
「やっぱり知っている人? 彼女誰?」
「ああ、アイツだ! 桔梗……俺を振った女」
アッ、と裕樹は口を押え、ボンヤリ立ちすくむ則武を見つめる。
「もしかしたら、あのいなくなったっていう、あの子?」
「ああ……アイツだ」
則武がギリッと奥歯を噛む。
「聞き捨てならないわね」
二人の会話を聞いていた薫と登麻里は、腰に手を当て、仁王立ちし、則武の前に立つ。
「君たちに関係ない!」
則武がギロリと二人を睨む。
「関係なくないわ。彼女は眠りの森の住人。家族も同じ。聞かせてもらいましょうか、二人の関係」
そんな不穏な空気の中、清に肩を抱かた琶子は、その腕から逃れようとジタバタする。
「大人しくしろ。話の邪魔をするつもりか!」
「その手を放してくれたら、静かにします」
「何故、離さなければいけないのだ。俺たちは恋人同士だぞ」
「全く! いい加減に……」
琶子の言葉に薫の言葉が重なる。
「いい加減にしなさい! あんたたち、うるさい!」
「ひやっ、すみません」
琶子がぺこりと頭を下げ、大人しくなる。
「フン、最初からそうしていれば、怒られずに済むものを!」
ニヤリと笑う清は、肩を抱く腕にグッと力を入れる。
貴方のせいでもあるんですよ! と琶子は小さく清を睨む。