眠りの森のシンデレラ
新たに四人の席を設け、ランチョンマットとカトラリーをセットし、薫はワイングラスに本日のワイン、シャトー・マルゴーの赤を注ぐ。
清は則武の話など全く興味なかった。
そもそも、彼が今夜ここを訪れたのは、琶子に会うためだ。そして、あの記者会見の反応を見るためだ。則武と裕樹はおまけに付いて来たに過ぎなかった。なのに、何故、今宵の主役がおまけの則武に取り替わったのだ。
清は憮然と腕を組む。
皆のグラスにワインを注ぎ終わると、薫は自席に戻る。
「どうぞ、召し上がれ」
「ウワァ、頂きます」
裕樹はワインより先に、テーブル中央に置かれた、大振りのガラスボール横の、お洒落なステンレスレードルに手を伸ばす。ガラスボールには雪を思わす真っ白な液体。それをスープカップに注ぎ入れ、スープスプーンで一口、口に入れる。
「ヴィシソワーズ。メークインを使っているね。とろりとした仕上がりだ。チキンストックも鳥の生臭さが全くない。リーキと玉葱の量もバランス良く調和している。生クリームもねっとりドロッとした乳脂肪分45%……とっても満足のいく仕上がりだ」
「って、料理評論家もどきはいらないから。ハイ、さぁ、お話下さい」
「エ~、それはないよ!」と頬を膨らませる裕樹をスルーし、薫は則武を見る。