眠りの森のシンデレラ

ところが、その安らぎを乱す輩が二人。則武と裕樹の登場だ。
「あ~、お邪魔だった?」と突然のゲリラ訪問に清が切れる。

「邪魔だ! お前たちに用はない。帰れ!」
「疲れたぁ、ちょっと休ませて」

だが、二人は清の言葉を完全無視。グッタリとソファーに倒れ込む。

「だって、則武が連れ回すんだよ。桃花懐柔第一弾だって言って」

「俺さあ、いろんな女に、それこそ星の数ほどプレゼントしてきたけど、こんなに迷ったの初めてだ」

「だから、お前たち帰れと言っているだろ!」

「違う! 迷ったんじゃなく、手当たり次第に買っていくんじゃないか! 何軒梯子したと思っているの」

もう文句も言いたくない、と裕樹は目を瞑り、ポツリと呟く。

「事前に琶子ちゃんに桃花ちゃんの趣味、聞いたらよかったのに……」
「オー、そうか!」

則武はガバッとソファーから身を起こす。そして、琶子を見る。
琶子より先に、清が身の危険を感じ、琶子をサッと我が身で隠す。

「則武、警告だ。そこから一歩も動くな! 話ならそこでしろ! いいな!」

則武はムスッと椅子に座り直しニッコリ微笑む。

「琶子ちゃん、教えて。桃花のこと。何でもいい全部教えて。お願いします」
「……それではダメだと思います」

だが、思いがけず、琶子の反論が図書室に響く。
クローバー三人は、普段と違う琶子に、ん? とその姿を見つめる。

「桃花ちゃんをダシにしないで下さい。門前払いされても、足蹴にされても、まず、桔梗さんと話すのが筋です。桃花ちゃんとは、それからだと思います」

淡々と、でも毅然と、言葉を発する琶子を、清は眩しそうに見つめ、そして、ポツリと呟く。

「お前、やっぱり子供じゃないわ!」

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