眠りの森のシンデレラ
全く帰る素振りを見せない二人に、清は業を煮やすが、暖簾に腕押しの則武と裕樹は、図書室に居座った。
則武は遠回しに桔梗や桃花のことを聞き出そうとするが、琶子は全くその手に乗らなかった。
仕方なしに、ひとまず桔梗の件は棚上げし、もう一つの方を解決しようと、『今ある』に、話をシフトする。
「そう言えば」と琶子は清に視線をやる。
「このお方は『俺は読んだことないけど』とのことです」
「エッ! 清って『今ある』読んだことなかったの?」
それは初耳だ! と則武も裕樹も大騒ぎし始めた。
「悪いか!」
「お前、ベストセラーで映画化もされたんだぞ」
「恋愛小説を読む趣味はない」
則武は、嗚呼、さもあらん、と琶子と同じ反応を見せたが、裕樹は何故か複雑な表情を浮かべる。
「まぁ、騙されたと思って……あっ」と則武は琶子の視線を感じ、言い直す「イヤ……絶対感動するから読め!」
則武の言葉に「時間があったらな」と清はつれない。
「で、琶子先生、イベント出演の件は……まだ、正式回答頂いていないのですが……」
「リハビリ次第で……善処を……と考えておりましたが、桔梗さんの件が解決しない限り、OKは無い……かと思われます」
「ヘッ!」と則武は豆鉄砲を食らったような顔をする。
裕樹が、ご愁傷様、というように則武の肩をポンと叩く。
「過去の悪夢、再びだね。一度お祓いでも行く? 付き合うよ」
裕樹の言葉が冗談に聞こえない則武は、悪魔祓いが良いか、ご祈祷が良いか、ウーッと頭を抱え、真剣に悩み始める。
清は『今ある』かぁ、と少し考え、一度読んでみるか、と琶子を見る。