眠りの森のシンデレラ

「まっ、お前のことはどうでもいい! それより桔梗だ! アイツ、本当に頑固だからな。今も愛している、と言ったところで信じてくれまい」

則武に視線を戻し、裕樹は当然だろという顔をした。

「六年間、さんざん浮き名を流していたものね。信用しろという方が間違っているよ」

「あれはだな、男の性だ。桔梗への愛とは重さも厚さも違う……それに、アイツを忘れるため、自棄だった。だが、一度も本気になったことはないぞ」

「まあ、本気じゃなかったってことだけは認めてあげるよ。ワンナイトばかりだったし、良く刺されず生きてこられたね。でも、僕が認めても何もならないけどね」

裕樹の言葉に則武は、それもそうだ、と項垂れる。

「とにかく、琶子ちゃんが言うように、門前払いされても足蹴にされても、彼女と会って話すしかないね」

話ができる相手がいる君が羨ましいよ……裕樹は心の中でソッと呟き、再び車窓を見つめる。ナナの面影を探すように……。

< 157 / 282 >

この作品をシェア

pagetop