眠りの森のシンデレラ
「まっ、お前のことはどうでもいい! それより桔梗だ! アイツ、本当に頑固だからな。今も愛している、と言ったところで信じてくれまい」
則武に視線を戻し、裕樹は当然だろという顔をした。
「六年間、さんざん浮き名を流していたものね。信用しろという方が間違っているよ」
「あれはだな、男の性だ。桔梗への愛とは重さも厚さも違う……それに、アイツを忘れるため、自棄だった。だが、一度も本気になったことはないぞ」
「まあ、本気じゃなかったってことだけは認めてあげるよ。ワンナイトばかりだったし、良く刺されず生きてこられたね。でも、僕が認めても何もならないけどね」
裕樹の言葉に則武は、それもそうだ、と項垂れる。
「とにかく、琶子ちゃんが言うように、門前払いされても足蹴にされても、彼女と会って話すしかないね」
話ができる相手がいる君が羨ましいよ……裕樹は心の中でソッと呟き、再び車窓を見つめる。ナナの面影を探すように……。