眠りの森のシンデレラ
「琶子先生、ご心配ありがとうございます。取り敢えず仲直りはできましたが、コイツ、まだ覚悟が足りなくて、桃花に言えないんです。なのに、桃花の了承を得ないと先へ進めない、とか訳わかんないこと言ってるんです」
「だって……」と桔梗が俯く。
いつになく弱々しい桔梗に、登麻里と桔梗が助け船を出す。
「それは当然でしょう。桃花あっての桔梗ですもの」
「そうね。この六年、桔梗は桃花のために生きてきたもの」
則武が少し躊躇いがちに聞く。
「お前……その、男とか……いなかったのか」
則武のデリカシー無い言葉に、桔梗はキッと則武を睨み付ける。
「お生憎様、お宅のように、異性と遊び回る暇もなく必至で生きてきたわ」
「すまない、悪かった。でも、お前を忘れようと……でも、忘れられなくて」
ブチブチと言い訳する則武に、桔梗は軽蔑の眼差しを向ける。
「そうね、男の性とはいうものの、浮名を流し続けた高徳寺さんって最低かも」
薫の言葉で、その場の雰囲気が微妙に悪くなりかけた時、それまで黙ってワインを飲んでいた清が口を開く。