眠りの森のシンデレラ
「さてと、これで公にできた。続きは記者会見で……だな」
目的は果たした、とばかり、則武の顔は晴れ晴れとしていたが、その横に佇む桔梗は、もう怒る気力もない、というほどグッタリしていた。
「桃花もおねむの時間だし、そろそろ帰るわ」
「……みたいだね」
則武の胸でスヤスヤと眠る桃花に、裕樹は柔らかく微笑む。
「行こうか」と則武は桔梗の背中をソッと押しエスコートする。
三人の後姿を見送る琶子がホーッと春色の吐息を付く。
「本当に素敵な家族ですね」
「……お前が無くしたもの?」
裕樹がギョッと清を見る。そして、何を言うんだ、と非難の目を向ける。
「……榊原さんも、でしょう?」
琶子は遠ざかる後姿を見つめたまま、動じることなく無遠慮に言う。
「お前のそういうズケズケ言うところが好きだ」
「……私も……好きみたい……です」
琶子が真っ直ぐ前を見たまま言う。
はぁ? と突然の、思いも寄らない言葉に清と裕樹は口をポカンと開ける。
「えっと……クリスマスプレゼントです」
少し上ずった声がぶっきら棒に言う。
琶子から清に目を移した裕樹は目をパチクリする。
ウワッ、嘘だろ!
裕樹の視線の先で、清が真っ赤に固まっていた。
写メしたい! でも、絶対怒るよな。
クソッとシャッターチャンスを不意にする歯がゆさに、裕樹は小さく舌打ちする。
清はたっぷり三秒後、ようやく我に返ると、ガバッと琶子に抱き付く。
「やっとだ……やっと気持ちが通じた」
こらこら、と裕樹は辺りを見回し、僕知らない、と激しく変動する明日のランキングを予測しながら、サイボーグも恋で人間に戻る……か、と口角を上げる。