眠りの森のシンデレラ
「何てことするんですか!」
図書室に着くなり、琶子は機関銃のように文句を並べ立てる。
「お前、ドンドン可愛くなっていくな」
「はぐらかさないで下さい。ふざけているんですか!」
琶子は清をキッと睨む。
「いや、事実を言ったまでだ」と清は琶子の頬に手を添える。
「最初会った時より、より人間らしくなった。仮面の笑顔より、素に怒った顔の方がより魅力的だ」
仮面、ハッと琶子は清を見る。
「お前はずっと心の底から笑っていなかった。ニコニコ仮面だものなお前は。お前が穏やかに笑うのは、甘い物を前にした時と妄想世界にいる時だけだった」
「そんなこと……」
ない、と言い切れない琶子は、清から視線を外すと床に目を落とす。
だって……黒い影から逃れるためには……琶子の瞳に涙が滲む
「大丈夫だ。何回も言ってやる。俺がお前を守ってやる。俺は何処へも行かない。いつもお前と一緒だ。信じろ」
ポロポロと流れる涙。
「……綺麗だな、お前の涙」
清は、拭い去るのが惜しそうに、頬に置いた手でソッと涙を拭う。
「怖がらず、俺と一緒に飛び立とう」
「……飛び立つ……何処へ?」
「そうだな、まずは世界の華麗な図書館巡りでもするか?」
エッ! と琶子の瞳に驚きが浮かぶ。
「……どこでもドアの話を覚えていたのですか?」
嗚呼、と笑って清が頷く。
「まっ、その前に、リハビリを終了しないとな」
「……ということは、やっぱり、イベントに出なくちゃいけないのですね」
琶子は暗く下を向く。