眠りの森のシンデレラ
無表情にジッと琶子を見つめていた清が、フワッと微笑む。
「お前、やっぱいいな! 理想の女だ」
清の言葉に、琶子は不思議の国の宇宙人を見るような目を向ける。
「俺等みたいな人種は人を疑ってかかる。『警戒心』『猜疑心』『不信感』あって当然だ。じゃなきゃ、財産は守れない」
財産を守るため、疑心暗鬼になる?
「富豪って強欲なんですね」と琶子は蔑んだ目で清を見る。
「勘違いするな。私利私欲で財産を守る、と言っていない。財産を守らなければ、企業は守れない。企業を守らなければ、そこで働く人々の暮らしも守れない……俺が言う財産とは『人』『物』『金』全てだ」
この人と話していると、自分の価値観が見事に覆される。たぶん、彼は宇宙から地球を眺めているのだろう、と琶子は思う。
そして、広い視野から発せられる言葉は、思い掛けないものばかりだ。これが階層ピラミッドの言語差だろう、と琶子はしみじみする。
天と地ほど違う宇宙規模の会話。これが、風子の言っていた『一面しか見ていない』を浮き彫りにし、琶子の心に沁み込む。
「榊原さんって……スゴイ人だったんですね」
それ故、この人はいとも簡単に垣根を越えてくる。ズット奥底にあった恐れを、簡単に拭い去ってくれる。琶子の顔に笑みが浮かぶ。
清は琶子の言葉に、「今頃気付いたのか」と俺様発言し、クスッと笑う。
「そんな俺が守ってやっているのだ……安心して、心置きなく行動しろ! お前のバックには俺が居る」