眠りの森のシンデレラ

「ほー、こっちはまた、大胆だ」

新聞をペラリと捲ると、そこには清と琶子のキスシーンが写っていた。
映画のワンシーンのような美しさだ。

「全く! キスまではいいわよって言っても、これはやり過ぎだわ!」

祐樹の脇を通り掛かった薫が、新聞を覗き見、ブツブツ文句を言う。

「で、どうしてここに、貴方が居て、琶子が居ないの?」

「二人は今どこにいるの?」と登麻里も新聞を覗き込み、裕樹に訊ねる。

「榊原邸で市之助氏の尋問? を受けていると思う」

裕樹の答えに、薫と登麻里はクエッションマークを浮かべる。

「だからね、清は曲がりなりにも天下の榊原ホールディングス副総帥。今回の騒動は、前回より、よりリアル……キスしちゃってるし、で、今後どうするか、金成氏を交えて? 四者会談だって」

市之助と金成、両名の名を聞き、途端に薫と登麻里は、嗚呼、と額に手を当て「ご愁傷様」と溜息を漏らす。

「ところでさぁ、薫、僕からの誘い、どうなったの?」

白騎士の笑みを浮かべる裕樹に、薫の顔が面倒臭そうに答える。

「あらっ、諦めていなかったの?」
「まさか、契約してくれるまで付き纏うつもりだよ」

シラッと答える裕樹に、薫はキュッと魅惑の唇を上げる。

「フーン、案外、根性あるのね。全て丸く収まったら、考えてあげる」
「絶対だよ!」

丸く収まるに決まっている。チェックメイト! 裕樹は薫の返事にガッツポーズを取り、これでスウィーツ部門拡張計画を実現できるとほくそ笑む。

< 191 / 282 >

この作品をシェア

pagetop