眠りの森のシンデレラ
清は、市之助のそんな姿などお構いなしに、淡々と意見を述べる。
「それに、少しずつゆっくり対応していたら、コイツは一生眠り姫ですよ。そう思いませんか?」
金成と市之助が琶子を見る。二人は何とも言えない顔になる。
「大丈夫ですよ。コイツのことは俺がしっかり守っているし、今のところ想定内の動きです。でも、想定外のことが起ころうとも、ノープロブレム。ご安心を。なっ、琶子」
清がポンポンと琶子の頭を叩く。
清の口から出る『大丈夫』この言葉は、琶子に魔法をかける。
キスシーンの写真に動揺していたにもかかわらず、スーッと心が落ち着いていく。だからだろう、琶子は思わず頷いてしまった。
その反応に、金成はまたも驚く。
全く、何てことだ! この短期間にすっかり懐柔されている。あんなに頑なだったのに……と。
「分かった。もう、何も言うまい」
それならそれで、お手並み拝見といこうじゃないか。金成は腕を組み、ふんぞり返る。
「但し、絶対、琶子を幸せにしろ、でないと、俺はお前を八つ裂きにする」
「それは恐いな。でも、心配には及ばない。俺たちは幸せになる」
清は琶子の髪を撫で、「そうなる運命だから。なっ、琶子」と綺麗なウインクをする。
運命。靄のかかった琶子の思考に一筋の光が当たる。
そうだ、クローバーとの出会いは、運命だったのかもしれない。
榊原さんは……殻を叩き壊しに現れた。
殻を破った私は幸せになれる? 知りたい!
「ならば……行動しなきゃ……進まなきゃ……イベントに出なきゃ」
突然、お告げを受けたように、琶子は呟き始める。
三人の男はギョッと息を飲み琶子を見る。
「……ついたのか? 決心」
清の問いに、琶子はコクンと頷く。