眠りの森のシンデレラ
「高徳寺さんのご依頼、正式にお受けいたします」
琶子は背筋を伸ばし、市之助、金成、そして清の順に見据える。
「だから、榊原さん、最後までリハビリに付き合って下さい。よろしくお願いします」
琶子が頭を下げると、清はその頭を抱え、ギュッと抱き締めた。
「その言葉を待っていた。結末はお前の意志なしに迎えられないからな」
本当にお前は愛い奴だ、と髪をガシガシ弄る。
「ちょっ、ちょっと榊原さん、放して下さい」
金成は我を取り戻すと、抱きすくめられ真っ赤になった琶子を見ながら呟く。
風子奥様、琶子がやっと過去のトラウマから抜け出します。
そして、肩の荷が下りたように安堵の息を吐き言う。
「琶子、俺も応援している。今からイベントが楽しみだ」
「嗚呼、最高の会場を用意する。なんなら、そのまま婚約披露パーティーへスライドさせようか。結婚披露でもいいが」
市之助が冗談と言えない発言をすると、清はフムッと考え、それもいいですね、とこれまた冗談とも言えない返答をする。
金成は、市之助と清の傍若無人ぶりを見ながら、アワアワする琶子に、これも運命だ諦めろ、と独り言ち、新聞を読み始める。