眠りの森のシンデレラ
「琶子先生、ありがとうございます」
記者会見を済ませた則武は、知らせを受け、榊原邸に飛んできた。
「問題が解決したら、善処しますとのお約束でしたので、速攻でしたね。本当、良かった……おめでとうございます」
「ありがとうございます。『巧速』近代偉人名言・格言BEST100に載った市之助氏の言葉を実行したまでです」
則武の口から出た言葉は、昼間、市之助氏から直接聞いた言葉だ。
「高徳寺さんも榊原さんも即断即決即行動派なんですね」
「でないと企業なんてもの、動かせませんからね」
則武の言葉に清も頷く。
「悩むだけ無駄だし、時間も勿体ない。できる男は皆そうですよ、琶子先生」
できる男を自負する則武は、自信満々に胸を張る。
じゃあ、私はできない女だ、と琶子は遅拙気味の我が身を顧みる。
「お前、何、急に落ち込んでいるのだ? 変な奴だな」
ムッと琶子は清を見る。
「別に……延滞気味の小説を思っていたわけじゃありませんよ」
「って、滅茶滅茶思っているように聞こえますが」
則武が可笑しそうにグーの手で口元を押える。
ウッと言葉を詰まらせ、上目使いに則武を睨む。
その目を清の手が覆う。
「そんな目で則武を見るんじゃない! お前の目が腐る」
則武は、何だそれ、と嫉妬満々の清を呆れ顔で見やり、コイツは放っておこう、と口を開く。