眠りの森のシンデレラ
これが俗に言うマリッジブルーなのだろうか?
清は、そんな風に、この状態を解釈をする。
仕方ない、と琶子をお姫様抱っこし、ソファーに座る。
そして、そのまま琶子を膝に置き、ポロポロと腕の中で泣き続ける琶子の背中をポンポンと優しく叩く。
「あのな、よく考えてみろ。俺と結婚したら、連動してお前は眠りの森の女主になるんだぞ。母とナナのように、眠りの森には、いつだって行ける」
それに、と清がニヤリと笑う。
「お前、俺のこと相当好きだろ」
エッ、と琶子が顔を上げると、清が涙で濡れた頬にキスをする。
「ちょっと離れたとしてもすぐに近付く。俺たちは磁石みたいだ、離れようにも離れられない。お前も俺のことが好きな証拠だ」
唇にも口づけすると、清は呟くように言う。
「もう降参しろ。結婚するぞ。迷う時間が勿体ない。俺はお前と一緒にいたい。答えはYESかNO、二つに一つだ」
以前は深海のような冷たかった清の黒い瞳が、妖艶な熱を帯び琶子を見つめる。
「どっちだ」
琶子は燃えるように熱くなる心に逆らえず、小さく答える。
「……YES」
言ってしまった自分の言葉を耳にし、琶子はハッと我に返る。
「私、今、YESって言いました?」
「ああ、もう取り消しはきかない。お前の素直な心がそう言ったのだからな」
慌てて否定する琶子に、本当にお前は面白い奴だ、と清はご機嫌な調子で再びキスをし言う。