眠りの森のシンデレラ

車が玄関前に横付けされ、運転手が後部席のドアを開けると、清を先頭に、則武、裕樹が車から降り立つ。

三人はリムジンの前で、清を中心に横並びになり、玄関前に立つ登麻里に目を向ける。

「彼女誰? 夢見るマミィー。三十五歳、独身ってとこかな、癒されそう」

則武が裕樹を見る。

「うーん、三十七歳ぐらい? 例えるならメアリーポピンズかな? 彼女には大人キャラメルパンケーキが似合いそう」

婦女子限定初対面年齢当てゲーム。
女性に対して失礼極まりないこのゲーム、考案者は則武。

人生はいつ如何なる時も、愉しく過ごさねば生きている意味が無い! がモットーの則武は、その言葉通り、一分一秒惜しまず人生を謳歌している。

それは裕樹とて例外ではない。彼の場合、その殆どが料理に費やす時間だ。
本音かどうかは分からないが、裕樹はこのゲームを、初対面の客を一瞬で見透かし上客にする訓練だ、と宣う。

彼等の間で、観音開きの重厚なドアをジッと見つめる清は、とうとうここまで来てしまった……と無表情な様でメランコリックなノスタルジーを感じていた。

そして、三人の優美な姿をウットリ見つめる登麻里もまた……。

美しいわ! BL世界で例えるなら、彼らは蒼王子、黒王子、白王子ってとこかしら。彼等が繰り広げる甘美な三角関係。

キャーッ、イイ!

こんなことならレッドカーペットを敷き、薔薇の花びらを撒き散らし、私もマリー・アントワネット張りのドレスを着るんだったわ、と職業柄なのか、趣味なのか、イケナイ妄想に取り憑かれていた。

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