眠りの森のシンデレラ
ああ、そうか……そうだ……。
琶子は、その想いに気付き、ソッと清を抱き返す。
「……私も……幸せです。貴方といられて」
清がハッと琶子を見る。
頬を朱に染めた琶子が照れ臭そうに微笑む。
「初めてだな、お前が気持ちを吐露するのは……」
込み上げる笑みを抑え切れず、清は上に乗る琶子の頬を両手で包むとジッとその瞳を見つめる。そして切なげな声で懇願する。
「愛している。結婚してくれ」
何度目のプロポーズだろう、と琶子は思う。
こんな風に、真摯な瞳で見つめられたら、もう逃れられない。
呟くように、琶子は告白する。
「私もようやく気付きました。貴方を愛していると……」
そして、言葉と共に初めて自らの意志で清に口づけを一つ落とす。
「あの……榊原さん……?」
目を見開き、息を飲み、微動だにしない清。
「あの……」
上から覗き込む琶子の顔に戸惑いが生まれる。
「……お前」
清は掠れた声を発すると、いきなり琶子を布団の中に引き入れ、その華奢な体を力一杯抱き締める。
「キャンセルって言っても、もう聞かないぞ」
清の唇が琶子のそれに重なる。息も付けぬほどの口づけ。そのあまりの激しさに、琶子の意識が朦朧とする。
「我慢する理由がなくなった」
清の手が、琶子の服のボタンに手をかけようとしたその時、コンコンとノックの音が部屋に響く。