眠りの森のシンデレラ
心の奥まで見透かすような瞳……則武はピタリと歩みを止め、さり気なく視線を外すと呟く。
「ここが住まいか。登麻里シークレットひとつゲット」
則武の側に来ていた裕樹が、怪訝な顔で耳打ちする。
「登麻里シークレット? 何それ?」
「ん?」則武が意外そうな顔をし、逆に訊ねる。
「会員制リドルゲームサイト『シークレット』知らないのか?」
裕樹は首を捻る。
「富豪層限定ステイタスサイトの一つ。今春、アッパー層で話題になり、超富裕層にまでジワジワきているゲームサイトだ。清も確か知っている筈だ」
「ステイタスサイトの存在は知っているよ。あれって中々認定されないんでしょう」
「ああ、この『シークレット』も類に漏れずだったようだ。だからかもしれないが、入会条件が滅茶苦茶厳しい」
そんな面倒なお遊びはごめんだ、と裕樹は顔を歪める。
「必須条件は、現会員三名の推薦と厳密な審査をクリアすること。その他諸々あるけど、とにかくクリアした者は、秘密厳守誓約書にサインさせられ……」
そこで則武はブルッと震える。
「破った者は、現地位を脅かす恐ろしい処罰が待っている。その上、会員権は超高額」
則武が裕樹の耳元で金額を伝えると、裕樹は仰け反る。
「バッカじゃないの、ゲーム如きに、そんなリスクを負って、おまけにそんな大金注ぎ込むなんて!」
「イヤ、それがそうでもないんだなぁ。会員同士の結びつきが、そのままリアル社会に生かされ、莫大な利益を生むんだよ。今、富裕層と超富裕層が最も注目しているサイトだ」
「フ~ン、で、どんな内容なの?」
少し興味惹かれた裕樹の問いに、則武がニヤリと笑い、再び耳元に口を寄せる。