眠りの森のシンデレラ

車中で琶子は盛大な息を吐く。

「清さん、今日はもう十分満足しました。疲れたので本屋さんは今度でいいです」

弱々しい声で琶子は帰宅を促す。

「二時か、お前、腹が減っているんだな」

そう言えば、と琶子も気付く。
八時に皆でお節を食べてから何も口にしていない。

「そうかもしれません」
「じゃあ、行くぞ!」

何処へ? とは聞かず、黙って助手席に座り、ボンヤリ窓の外を眺める。
都内にもかかわらず、車の量が少ない。やはりお正月だからだろうか?

今日は初めて尽くしだったな、と裸の街路樹に灯されたLEDの青い光を見送りながら、なんだかんだ言いながら、楽しかったな、と微笑む。

清の運転は丁寧で優しい。
琶子はフワッと欠伸を一つし、心地いな、と瞼を閉じる。

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