眠りの森のシンデレラ
「それよりお前、私みたいってなんだ! 卑屈な態度は負の連鎖を呼び込むぞ」
「だって、あまりにも価値観が違うし……我が身を卑下したくもなりますよ」
むくれて唇を突き出す琶子に、清が片眉を上げる。
「価値観? メニューに記載してある値段が高額だと言っているのか?」
ケッと清は言葉を吐き捨てる。
「お前は舌が超え過ぎているから、そう思うんだ。そりゃあ、薫の料理を毎日食べ続けたら、そうなるよな」
清は、そうだなぁ、と考え、質問する。
「お前、もし、薫のお節料理に値段を付けるとしたら幾ら出す?」
「……エッ、薫さんの料理に値段なんて付けられません。そんな畏れ多いこと」
滅相もないと琶子はブルブル首を振る。
「なっ、ちゃんと分かっているじゃないか。俺もそう思う。ちなみに、奴の作った今回のお節、食べようと思ったら、ここにある最高金額でも食べられないだろうな」
驚愕の事実! 琶子は眩暈を覚える。
「そんなに高いのですか……」
「何を言っているのだ。お前だって値段が付けられないと言ったじゃないか。ちゃんと価値が分かっているからだ。卑屈になる必要などない」
本当にこの人は……。
琶子の気持ちがスーッと晴れていく。
「また、貴方に救われたようです」
フォークに刺した最後のメインディッシュをパクリと口に入れ、美味な笑みを浮かべる。
「値段に見合った最高の味です。この牛のヒレ肉」
琶子のコメントに、清は、価値あるお前の味はどんなだろうな、その時が楽しみだ、とニヤリと笑う。