眠りの森のシンデレラ
「スゴク可愛くて、綺麗だ。緊張は?」
「……ありがとうございます。薫さんのお茶で、だいぶん収まりました」
いつもなら、清の甘い言葉に真っ赤になる琶子だが、やはり緊張しているのだろう、と血の気のない琶子の顔を見つめる。
「ならいい。お前みたいに天然な奴には僅かな緊張はあった方がいい」
だから、少しでも緊張が解けるように、清は憎まれ口を叩いてみる。
案の定、琶子は、どういう意味? 失礼な! とムッと反応を示す。
そして、怒りと共に頬に赤みが差す。
琶子は残りのハーブティーを一気に飲み干すと、フンとモニターの方を向く。
丁度、檀上中央で則武がマイクに向かい話しているところだった。
キリリとした顔で堂々と話す則武から、普段のおチャラけた様子は一ミリも見受けられない。
「……高徳寺さんって、ああ見ると立派に見えますね」
ああ見ると立派? 普段はどうなんだ? と清は可笑しそうに唇の端を上げる。
「あれが立派とは、お前はもう少し見る目を養う必要があるな」
清の嫌味を無視して、そうそう、と琶子は思い出す。
「水佐和さんも薫さんも、先日の記者会見、カッコよかったです」
裕樹はいつも通りスウィートなイケメン王子ぶりを発揮し、薫は普段とは別人のような、王宮の貴公子を見事に演じていた。登麻里も言っていたが、やはり元バレエダンサー、『魅せる』が上手い。
清は自分以外の男性を次々褒める琶子に苛立ちを覚える。
そこに、「それに」と琶子が恥ずかしそうに、でも、ぶっきら棒に付け足す。
「昨日の清さんも、スゴク素敵でしたよ」
清の眼がモニターから琶子に向く。
ツンとソッポを向きながらも、頬を染める琶子の姿に、怒りのボルテージがシュルシュルと下がり、清の機嫌はたちまち良くなる。が、それも一瞬だった。
「やはり、ああいう場が、立派に、カッコよく、素敵に、魅せるのでしょうか。いわゆる舞台マジック? とでもいいましょうか」
琶子の言葉に、再び清は機嫌を損ねる。
「舞台マジック! 何だそれは! 俺は、そんなまやかしが無くても正真正銘、立派でカッコよく素敵だ!」