眠りの森のシンデレラ

『青天の霹靂』とはこのことだ、と琶子はびっくり仰天する。

「ハア! ということは生放送で、私の話が全世界に流れるっていうことですか!」

「いや、違う。著書購入者に限る、だそうだ」

それでも、先程の話から察すると、購入者全員が見たら二十万人は確実ということだ。

呆気に取られた琶子は埴輪になり考える。
二十万人ってどれだけの人なのだろうと。そして、何故か二十人で撮った卒園写真を思い浮かべる。

「まぁ、そんなに心配するな。大丈夫だ。きっと楽しめる」

シレッと宣う清だが、どう見ても、この事態を面白がっているように見える。

「他人事だと思って……」
「他人事には違いないが、まっ、とにかく、ここがお前の最終地点じゃない。これを機に大いに羽ばたけ。俺がついている。ズットな」

顔を曇らせ逃げ出しそうな琶子を、清は両腕で包み込む。
こんなことで誤魔化されないぞ! と琶子は体を捻るが、びくともしない。

「バカか、ここから抜け出そうとか、百万年早いぞ!」

清は更に力を強める。
もう! と琶子は口をへの字に曲げながらも、いつもこうなるんだから、と抵抗するのを止める。

清の腕の中はやっぱり心地いい。
スッキリとしたシトラス系の香りに、清独特の香りが混ざり、気持ちが落ち着く。

「清さん……ちゃんと見ていて下さいね」

琶子は不安な色を残す顔を上げ、清を見上げる。
清は、ああ、と琶子の髪を優しく撫で、約束だ、というように唇にキスを落とす。

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