眠りの森のシンデレラ
清は琶子を抱き上げると、ベッドまで運び、そのまま二人で横になる。
「疲れただろ。約束通り、今日は何もしない」
ほのかに灯るベッド脇のライトが、サイドテーブルに置かれた『今ある』を照らす。
清はそれを一瞥し、フッと目尻を下げる。
「魂の結び付きか……あいつ等、たまにいいことを言うな」
腕枕の中の琶子が清を見上げる。
「聞いていたんですか?」
フワァと欠伸をすると琶子は笑い、ストカーみたいですね、とからかう。
「ああ、何とでも言え。今日は絶対、お前と一緒に寝ようと思っていたから行動したまでだ」
「相変わらず強引ですね。でも、本当、温かいです」
清の胸に顔を擦り寄せ琶子が気怠そうに言う。
「幸せだな。こんな日が来るとは思ってもいなかった」
「幸せです。私も思ってもいませんでした」
二人は顔を見合わるとクスクス笑い合う。
「愛している」
「愛しています」
清の唇が琶子の唇にソッと触れる。
「清さんが大好きです!」
琶子がキスを返す。
「おやすみなさい。清さん」
「ああ、おやすみ」
二人は寄り添い目を瞑る。
静かな眠りの森に、ヒューッと雨交じりの冷たい風が吹く。
カタカタと風と雨が激しく窓を叩くが、琶子にもう恐怖は無い。
すぐ側に確かな温もりがあるから。