眠りの森のシンデレラ
「どれぐらい眠っていた」
この人何様? 何て偉そうなんだ! でも……何故か嫌悪は感じない。
そんな自分の気持ちを不思議に思いつつ、琶子は腕の時計を見る。
「あっ、えっと、十……二十……三十分ほどです」
清はスッキリとした目覚めに驚く。
両親とナナがこの世を去ってから、彼の眠りは『熟睡』や『快眠』といった単語とは無縁だった。
体が軽い……久々に眠った、という感覚に、清の心は久し振りに高揚する。
琶子から手を放し、清は上半身を起こし、ん? とその手に触れた肌触りの良い物に目をやる。
ブランケット……掛けてくれたのか?
それにしても……とまじまじと其れを見つめ、小さく息を吐く。
またもブサ犬……おまけにピンク。
清は素早くそれを畳み、こんな姿を則武と裕樹に見られなくて良かった、とそれを脇に置く。