眠りの森のシンデレラ
「薫オネエ様の目は誤魔化せないのか。じゃあ、腹割って話そう。幾らなら受けてくれる?」
途端に裕樹の顔が、天使から堕天使へと変わり、妖しく光る瞳が厭らしく薫を挑発する。
薫はコケティッシュな笑みを浮かべ、愉し気に裕樹を迎え撃つ。
「なるほど。貴方の瞳はそんな風に熱く……そして、空虚なんだ。大切な何かを失った……のかしら?」
薫の言葉に裕樹の顔付きが変わる。
コイツ、何を知っている! 射るような瞳を薫に向ける。
則武が、ん? と怪訝な表情を浮かべる。
ダメだ! 知られるわけにはいかない!
裕樹の瞳が一瞬困惑気に揺れる。
「あのね……お金じゃないのよねぇ」
薫はその瞳に気付いたが、素知らぬ顔で色っぽく笑い、冷めた目で裕樹の瞳を見つめ返す。
「何だって言うんだ!」
不貞腐れたような裕樹の声が、言葉を吐き捨てる。
「んー、そうね、それが分かったら、引き受けてあげてもいいわよ」
愉しそうな薫の様に裕樹がギリッと唇を噛む。
「……約束だぞ、忘れるな!」