眠りの森のシンデレラ
二人のやり取りを見ていた則武が肩を竦める。
「今の勝負、薫姐さんの勝ちだな。姐さんの方が一枚も二枚も上手だ。敵に回したくないな」
「姐さんって……ンフッ、その呼び方気に入ったわ。そう呼んでもいいわよ」
「有難き幸せ」
則武は右手を左胸に置き軽く頭を下げ、騎士のお辞儀をする。そして、姿勢を戻すと甘く微笑む。
「ところで、俺も近江琶子の件で協力を仰ぎたいのだが……」
フ~ン、と薫は唇を突き出す。そして、どうしようかなぁ、と則武を見る。
「そうねぇ、琶子のためになるのだったら協力は惜しまないけど……返事はもう少しYOUたちを観察してからにするわ」
則武がニヤリと笑う。
「許可も出たことだし、これから何度もこちらに足を運び、落とさせて頂きます」
薫は自分の膝に両肘を付き、頬杖を付き、ニッコリ微笑む。
「流石、ウルフという異名を持つ高徳寺さんね。せいぜいお手柔らかに!」
ウルフ対大蛇……どっちもどっちだな、と第三者に成り下がった裕樹はカップケーキを口に運ぶ。
口を動かしながら、だが、と薫を盗み見る。
コイツ、単なるゲイじゃない、注意が必要だ。
しかし、とテーブルのスイーツに目をやり、やはりレストランMのあの計画に薫の力は必須だ。ヨシ! と強く頷き宣言する。
「僕も落とさせて頂きます!」
「裕樹、お前もか!」と、則武は右手を差し出し、「共に頑張ろう!」と力強く握手をする。
薫はその姿を見つめながら、おバカで可愛いお子たちだこと、お手並み拝見、とばかり魅惑的に口角を上げる。