眠りの森のシンデレラ
「現在、眠りの森に入居しているのはこの五人だ」
最初から話すつもりで来たのだろう。用意周到な金成は、先程の封筒から写真を取り出し、清の前に並べた。
「左から……」
◇池田登麻里……三十八歳、入居歴十年。官能小説家。
◇桜井薫……三十二歳、入居歴八年。パティシエ。
◇三井桔梗……二十六歳、入居歴六年。イラストレーター。
◇三井桃花……五歳、入居歴五年。桔梗の娘。花園幼稚園年長組。
◇近江琶子……二十二歳、入居歴十二年。小説家。
清は琶子の写真に目を止め、トントンと人差し指で指す。
「彼女は?」
金成は則武と裕樹の訪問を思い出し頷く。
「琶子か。あいつが十歳の時、風子奥様の依頼で、俺が孤児院から引き取った」
母の命で……。
「じゃあ、後見人になったのも母の指示か?」
「よく知っているな。ああ、そうだ。あの頃……そうか、お前はアメリカだったな」
琶子の過去に母親が関与していたことに、清は少しばかり驚く。
「旦那からDVを受けていた琶子のお袋さんが、眠りの森に助けを求めたのが、その一年前。丁度、奥様がここをシェルターにした時だ。一旦、ここに身を寄せたが、隙を突かれ、旦那に連れ戻されてしまった。警備が厳重になったのはそれからだ」
なるほど、則武の言った『要塞』という言葉も、敵から守るという意味では、あながち間違いではなかったな、と納得をする。