眠りの森のシンデレラ
「でも、イベント会場は清のホテルだよね。ホテル側としても成功したいよね。それに、その後開催されるパーティーの料理、僕んとこなの。絶対、琶子ちゃんに食べてもらいたい!」

ここは譲れぬ! というように裕樹は力説する。

「なぁ、コイツもこう言ってることだし、清、協力してくれ! 最大の危機を救ってくれ!」

清は裕樹のおねだりポーズも、則武のお願いポーズも、フンと鼻であしらう。

「今日付き合ったのは、別件で金成と話があるからだ」

手にした書類をアタッシュケースに仕舞うと、清は静かに目を閉じる。

誕生から二十九年、兄弟同様に育った三人は、互いの性格を熟知している。清の性格上、これ以上何を言っても無駄だということも……則武と裕樹は溜息交じりの息を吐き、首を横に振る。
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