眠りの森のシンデレラ
時の流れと同じように、粛々と流れ行く車窓の風景。
なるほど、これも現実だ。
琶子が眠りの森に閉じ篭っていた十二年、世の中は時を刻み続け、歩みを止めることはなかったようだ。
この世に私の存在が無くても世界は動いているんだな……と琶子は思う。
じゃあ、私の存在意義は? と考える。
お屋敷町の旧街道を抜け、車の行き交う大通りに出る。
建ち並ぶスタイリッシュでお洒落な高層ビル、上へ下へと網目のように入り組む立体道路。そこを走るたくさんの車。
それらを目にした途端、琶子のメランコリックな思いが吹き飛ぶ。
記憶の片隅におぼろげに残る街の風景。それに、思い描いていた未来都市がリアルに重なる。
ウワァ~! と琶子は窓にへばり付き、喜々とその様子を眺める。
運転手はバックミラー越しに琶子の姿をチラ見し、子供の様な人だ、とフッと口元を綻ばせる。