眠りの森のシンデレラ
「お祖父さん、何をしているのですか!」
そこに響く喫驚の声。清の声だ。
「……お祖父さん?」
琶子は、我が身を抱き締める腕の中から老人を見上げる。
「申し遅れた。私は榊原市之助。アイツの祖父だ」
アイツのところで、声の主は清を顎で指す。
清は琶子に駆け寄ると、薫の時同様、市之助をベリッとヒッペ剥し、腕の中に琶子を包み込み、市之助からその身を守る。
「彼女は俺の大切な客です。勝手な真似しないで下さい」
「琶子がお前の客……金成が許したのか?」
「ええ、そうですが、それが何か?」
見る間に市之助の顔が鬼の形相になる。
「アイツ、私には絶対に会わせなかったくせに! どうしてお前ならいいのだ!」
「って、お祖父さん、琶子が眠りの森にいることを知っていたのですか? その前に、琶子のことをご存じだったのですか?」
「ああ、彼女の母親に眠りの森を紹介したのは、私だ」
エエッ! と驚いたのは琶子だった。
「……母に紹介?」
清の腕の中、震える声が尋ねる。
「琶子、大丈夫か?」
清はその背を優しく撫でる。