生き続ける意味

ぱっと上を向くと、もう白衣はなくて、腕組みをしながらあたしを見る亮樹兄ちゃん。


あたしは、思わず飛びついた。


「おぉ...。どうしたの、桜?」


頭を撫でながら聞く亮樹兄ちゃん。


あたしは、抱きついたまま亮樹兄ちゃんを見つめた。


そして、ほっと息をつくと、話した。


「亮樹兄ちゃん...。もう帰っちゃうの?」


あたしの弱々しい声に、微笑む。


「うん。今日はね。でも、明日は早く来るから。ちゃんと寝とくんだよ?」


そう言ってあたしを離した。


だって、それじゃあ...。


もう、ほんとうに病院生活に戻ったみたい。いや戻ったんだけど、実感がふつふつとわいてくるというか。


そう思うにつれて、目がじわじわとにじんでくる。気づいたときには、大粒の涙がこぼれていて。


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