生き続ける意味
ぽつり、とつぶやくと亮樹兄ちゃんはその場で立ち止まった。
思わず亮樹兄ちゃんの顔を見ると、唇を噛み締めている。
「ここには、いない。」
ドクン
心臓が、大きく脈打った。
亮樹兄ちゃんの白衣をぎゅっと握る。
「どういうこと?晴ちゃんは…晴ちゃんはどこにいるの?」
恐る恐る聞くと、亮樹兄ちゃんは何も言わず、また歩き続けた。
けど、診察室の方じゃない。
もしかして……
嫌な考えが頭によぎる。
大丈夫だよね?大丈夫だよね、晴ちゃん。
そう何度も自己暗示して、亮樹兄ちゃんはまた立ち止まった。
「桜、見てみ?」
ぎゅっとつむった目を開くと、真っ白な壁に、透明なカーテン。
数え切れないほどの機械と、ピッピッピッ…という規則正しい機械音。
“ICU”と書かれている部屋。
「集中治療室って知ってるか?
ほら、一番奥のベッド。」