生き続ける意味








ぽつり、とつぶやくと亮樹兄ちゃんはその場で立ち止まった。




思わず亮樹兄ちゃんの顔を見ると、唇を噛み締めている。




「ここには、いない。」



ドクン


心臓が、大きく脈打った。


亮樹兄ちゃんの白衣をぎゅっと握る。





「どういうこと?晴ちゃんは…晴ちゃんはどこにいるの?」



恐る恐る聞くと、亮樹兄ちゃんは何も言わず、また歩き続けた。


けど、診察室の方じゃない。



もしかして……




嫌な考えが頭によぎる。


大丈夫だよね?大丈夫だよね、晴ちゃん。



そう何度も自己暗示して、亮樹兄ちゃんはまた立ち止まった。





「桜、見てみ?」



ぎゅっとつむった目を開くと、真っ白な壁に、透明なカーテン。

数え切れないほどの機械と、ピッピッピッ…という規則正しい機械音。




“ICU”と書かれている部屋。




「集中治療室って知ってるか?

 ほら、一番奥のベッド。」













< 629 / 737 >

この作品をシェア

pagetop