生き続ける意味
「あたし、聞いちゃった。晴ちゃんが余命宣告されてるってこと。
けど、信じたくなくて、大丈夫だよって…言った。」
全然大丈夫じゃ…なかったんだ。
あたし、晴ちゃんがの容態の詳しいこと知らないで、口先ばっかり大丈夫って…。
少し考えてみれば、わかることじゃん。
晴ちゃんがみたいな病気で、あたしが晴ちゃんなら、"大丈夫"って言葉の重みは、すごくある。
ひとこと、大丈夫だよって言われると、希望がわくんだよ。
助かるかもって。大丈夫かもって。
けど、それは容態をよく知ってる人から言われたらの話。
あたしみたいに、なんにも知らない人から言われたら、
ただなぐさめるみたいに…同情の言葉みたいに聞こえてしまう。
あたしだったら、言われたくない…。
それに、自分で大丈夫じゃないってわかってたら、余計に嫌だよ。
「それは…さ、言ってあげてもダメではないんじゃない?
どうしてダメなの?」
亮樹兄ちゃんは相変わらず、真剣な顔。
「っ…亮樹兄ちゃんにはわかんないよ。
健康な人には…わかんないって。
自分で大丈夫じゃないってわかってて、人から何度も何度も、大丈夫だよって言われるの…嫌になることなんて。」
すると、亮樹兄ちゃんは、はぁとため息をついた。
思わず顔を上げる。
「…桜。じゃあ、なんて言えばよかった?」
なんて…なんてって…。
「そんなの…わかんない。」
晴ちゃんになんて言えば、元気になってくれるかなんて、わかんない。
「桜は、晴ちゃんがのためを思って、言ったんでしょ?なら、いいじゃん。」
あたしは首を振った。
違う…違うもん。
「あたしが思ったことをそのまま言っちゃったから…。」
「けど!…大丈夫、よくなるよって言葉は、本当に晴ちゃんのことを想ってなきゃでない言葉だよ。」