生き続ける意味
「聴診器どこやったっけ…あ、あった。
………え?」
手に持った聴診器を思わず落としてしまった。
桜の手が、上にあがって動いてる。
急いで近寄ると、ぱっちりと目を開いた桜の姿があった。
ぼーっと目の前の自分の手を見てる。
グーにしたり、パーにしたり。
しばらく動かしてると、気配に気がついたみたいで、こっちを見た。
酸素マスク、たくさんの管が繋がれてる桜の姿だけど。
このときは、そんなの関係なかった。
嬉しかった。
「りょーき、にーちゃん…」
マスクをしてるせいで、しゃべりづらそうに顔をしかめているけどかすかに笑っていた。
「桜!!!」
「えっ?桜ちゃんがどうかしたんですか……って桜ちゃんが!!」
俺が桜の両手を握ると、茜さんもそばに駆けつけた。