生き続ける意味
「亮樹兄ちゃんっ?」
「ん?どうしたの?」
あたしは亮樹兄ちゃんの手をきゅっと握った。
「あたしっ…あたし、まだ、夢見てるのかな……?
治って、きてるなんて、ほんとに夢みたい……!」
ここから見える、診察室の風景。目の前にいる亮樹兄ちゃん。この車イス。…そして、あたし。
あたしの足に当たる、冷えたクーラーの風も、あたしが今ここで生きてるって教えてくれた。
夢じゃ…ないの?ほんとに現実?
「ううん、夢なんかじゃないよ。ここは、桜が頑張って治療したり、苦しいことを乗り越えた現実だよ?」
あたしの手に落ちる涙がすこしだけあったかい。
「亮樹、兄ちゃんっ………!!
ひっく……ふえっ……うわあぁんっ!!!」
ほんとなんだってわかった瞬間、いっきに涙がこぼれ落ちてきた。
床をびしゃびしゃにしてしまうんじゃないかってくらいの大粒の涙。
亮樹兄ちゃんに思いっきり抱きついた。
歩けないとか、立てないとかもう頭になくて、飛びつくように抱きついたら、車イスから落ちた。
けど、亮樹兄ちゃんが抱えてくれた。
「もう、苦しい治療しないの?」
「ああ。そうだね?」
「あたし、家に帰れるの?学校行けるようになる?」
「もちろん。」
「退院できる…?検査も、もうしない…?」
「退院はできるよ!でも、検査はまだ何回か必要かなぁ…」
最後の言葉が気になったけど、そんなのもう関係なかった。
うれしくて、うれしくて、ほっとして。
心の底から嬉しい気持ちが込み上がってくるかんじだよ。