生き続ける意味
「これからの治療方針とかは、こんど教えるから。」
げ、まだ治療……?
「あ、もう苦しいやつはしないよ。
どっちかって言うと、退院できるようにするためにね。」
な、なんだ……病気やっつけるやつじゃないのね。
「それより、翔と実優ちゃんのこと完全に忘れてるでしょ。」
「…あ。」
「ほーら。茜さんから伝言、ふたりあしたテストだったからもう帰るね、だって。」
テ、テスト?うそでしょ、あしたテストで今日お見舞い来てくれてたの…。
も、申し訳なさすぎる。よし、こんど退院したら何かおごってあげよう。
病室に帰ろうと、移動してるとき。
「あっ………桜?ちょっと教えなきゃなんないことがあるんだけどね?」
亮樹兄ちゃんが、なんだかくちびるをかんで悲しそうな顔してる。
なんだろ…?
「なに…?」
すると、亮樹兄ちゃんは一回車イスを止めて、あたしの前に来てしゃがんだ。
その瞬間、なぜか廊下が静まり返っているのが、怖く感じた。
しん、と静まり返っていて。
「あのね、晴ちゃんが………」
…それを聞いた瞬間、あたしは胸が凍りついた。