螺旋階段(書いてる途中です)
その光景が桜の目に焼き付いて離れてはないだろう。
そして、その現場を恭子になんて言える訳がない。


何も出来ずに只、偉そうぶって三年の廊下にまで来るなんて、大したものだこと。


私の立場は単なる三年生って言うだけの事で、この学校内において、大した立場にない。

制服はギリギリの校則違反。
煙草やお酒、それから性行為は井川家で覚えた。

私はこの家庭において、最も必要とされる人材だと云う事を思い知らされ、中学を卒業した後の事も考えたくもない。


今更になって水商売に手を染めた母、恭子。
若気の至りから徐々に老いぼれる父、紀一。
特に苦労も知らない癖に何故か不良ぶる妹、桜。


私は、たった一人で此処を支えていく事なんて御免だ。



一刻も早く井川家から脱出しないと。

桜なんて羨ましいものだ。
誇らしげに思ったのは、自分自身の首を絞めた私の過去への復讐劇と自己陶酔だ。


身勝手にすれば良いと思う。
私は知らないよ。


恭子が泣いて縋るも、紀一が私から桜への、世代交代が行われるのも、私が出て行ってからの光景が目蓋の裏側へ向かう。

逃げ切れるのか。
突き放せるのか。

そもそも私と云う人間が愛される時が在るのか。


ぼんやりと廊下に立ちすくんで居た。
辺りを見渡した。
同じクラスの男子がとてつもなく、下らない事で大笑いしている。
馬鹿な女友達が偽物の友人ごっこをしている。
手を繋いで制服のまま、堂々とママゴトをしてるカップルが目の前を横切る。


幸いな事、嫌味にも似た。
恭子の顔立ちに、感謝、感謝。


そのまま放っておいて欲しい。
一人で居たい。
誰も話掛けてくんな。
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