甘い恋じゃなかった。
…あぁ、いいお湯だった。
お風呂から上がり脱衣所で体を拭く。ついでにササッとボディクリームも塗ってしまおう。最近買ったばかりのハーブの香りがするボディクリーム。今日はいい香りに包まれてぐっすり眠れそうだ。
“女の嫉妬は怖いからね…爆睡しているところをナイフでグサッ!とか…”
ルンルン気分でボディクリームを塗り込んでいると、不意に、昼間会社で言われた莉央の言葉を思い出して、ブルリと寒気が走った。
今のところ、ブーブークッションに、塩入りのホワイトシチュー。ナイフでグサッ!よりは大分可愛い。でも、これで終わるとは限らない。
ふと脱衣所に置いてあるスクールバックが目に留まった。ドナルドの可愛いキーホルダーが付いているそれは愛良さんの物だ。
口が開いていて少し覗けば中が見えそうである。
いや、絶対ないと思うよ?ないと思うけど。莉央が大袈裟すぎだと思うけど、まさか、ナイフとか…ないよね!?
あまり良くないことだとは思いつつ、全裸のまま、そーっと中を覗き込んでしまう。
どうやらナイフはなさそうだ。だけど、代わりに一番上に置かれている白い封筒が目を引いた。
そこには女子高生らしい丸文字で“退部届”と書かれていて。
これって…。
「っくしょい!」
いつまでも裸でいたせいか、盛大なクシャミが出た。とりあえず服着よ、服。