甘い恋じゃなかった。
「おー、来たか」
桐原さんがジーンズのポケットにスマホをしまう。
「なんか変な感じだな。お前と外で待ち合わせするの」
そして私がさっき思ったことと全く同じことを言った。
「ていうか桐原さん…何なんですか、その格好」
「は?何が」
意味が分からない、とでも言いたげに首を捻る桐原さん。
「なんですかそのTシャツ。いつからそんなポンジュース好きになったんですか」
「はぁ?別に好きじゃねーよ。俺ジュース飲まねぇし」
「じゃぁなんでそんな服着てるんですか!」
「目の前にあったから着ただけだ。行くぞ?」
いやちょっとかっこいい風に言われても!ていうかそんなTシャツなかなか目の前にないよ!?
桐原さんがポケットに手を突っ込んで歩き出す。
女子グループがキャァキャァ言いながら道を開けた。
あぁ…
でも悔しいけど。
ポンジュースのTシャツのくせに、それすらも何となく着こなせてしまっているのは、私も認めざるを得ない。
「不条理だ…」
「は?意味わかんねぇこと言うな」