甘い恋じゃなかった。
「べ!?別に顔赤くなんてしてませんし!!」
「処女ってこれくらいで照れんのな~」
「!?」
こっこの人は屋外でなんていうことを…!!
「卑猥な!!」
「何がだよ」
桐原さんがク、とバカにしたように口の中で笑った。
「桐原さんなんて…桐原さんなんてベロ真っ青なくせに!!」
何か言い返したくて口を開いたら、自分でも相当意味の分からない悪口(?)が飛び出してきた。やばいな私。これじゃ動揺しているのが丸わかりだ。
「お前の買ってきたかき氷のせいだろうが」
桐原さんが含み笑いをしたまま横目で私を見ている。普通に返しているように見せかけて、この目は完全にバカにしている。おまけにベ、と真っ青な舌を見せつけられる始末。くそ~…
「もう離してください!」
「やだね」
振り払おうとしたら、逆につかむ手に力がこめられた。
「絶対離してやんね」
「は…」
「お前からかうの結構面白いわ」
暇潰しくらいにはなるな、と笑う桐原さんをぶっ飛ばしたい。
でも一番ぶっ飛ばしたいのは、さっきの言葉に一瞬、ドキッとしてしまった自分だ。
もう、どんだけ免疫ないわけ私!?
だけど無理矢理にでも手を振り払えないのは、この開放的な夏の雰囲気と、非日常的なお祭りの空気のせいだ。うんきっとそうだ。いや絶対に、そうだと…いうことにしておこう。