甘い恋じゃなかった。
莉央が鬱陶しそうに長い髪の毛をかきあげる。それが色っぽくて一瞬見とれてしまった。
「他に何か言いたいことは?ない?あ、そう」
「いや、ある!言いたいこと凄いあるよ!」
すごい、この美女私の意見なんて1ミリも聞く気ないよ!?
「とりあえず明里は至急カバ男サンのスケジュール聞いてきて。
じゃぁ私お手洗い寄っていくから」
じゃよろしく〜、と軽くそう言い残して、莉央はさっさと歩いていってしまった。
えー、マジかよ〜…。
一人残された私は会社の通路で項垂れる。
私と莉央と牛奥と桐原さんで焼肉なんて…。
私は頑張ってその図を想像してみたけど、ダメだ…。全然、想像できない。桐原さんが来るわけないよ、そんなの。
「行くわけねーだろ」と仏頂面で即答する桐原さんだけが容易に想像できる。
それからの午後は、どうやって桐原さんを連れていこうか、そればかりで全然仕事が捗らなかった。