甘い恋じゃなかった。
「ふーん…」
桐原さんがなぜか私を見て、その口元をだらしなく緩ませる。
「すごい鈍感でイライラするけど、なんたか構いたくなる奴…ね。なるほど」
「…ちょっと。何で私に向かって言うんですか」
「別に見てねーよ。自意識過剰」
「はぁ!?」
思い切り眉をひそめた私から視線を逸らし、桐原さんが厨房の方を見る。
「つーかデザートはまだかよ」
「まだ来ませんよ。全然お肉食べてないじゃないですか」
そんな私たちのやり取りに、莉央ウフ、と綺麗な笑みを作って言った。
「桐原さん、甘いものがお好きなんですか?」
「好きだよ!!好き過ぎてパティシエにまでなっちゃったんだから」
桐原さんの代わりに私が答えると、桐原さんが心底嫌そうな顔で睨みつけてくる。
「お前みたいなケーキバカ思考と一緒にすんな」
「私がケーキバカなら桐原さんはケーキ大バカですね!」
「黙れ」
網の上でくすぶっていた焦げた肉を私の口に押し込んでくる桐原さん。
「苦っ!」
苦しむ私を見て、桐原さんが楽しそうに笑みを浮かべる。やっぱり性格は最悪だ。