甘い恋じゃなかった。
♦︎ふたり帰り道
4人での焼肉が終わり、牛奥と莉央は、人が疎らな電車内に2人並んで座っていた。
明里と桐原は違う方面の電車に乗って2人で帰っていった。
あの2人、家も近いんだろうか。目下、牛奥の頭はそのことでいっぱいだった。
「それにしても桐原さん、かっこよかったよねー」
深刻そうな顔の牛奥とは裏腹に、朗らかな顔した莉央が言う。久しぶりにレベルの高いイケメンを間近で拝むことが出来、莉央は上機嫌だった。ただ、一番の勝負服、シャネルのワンピで参戦できなかったことだけが、本当に悔やまれる。
「あぁ…そうだな」
素っ気なくそう返す牛奥。
莉央がフ、と口元に微かな笑みを浮かべた。
「面白くなさそうだね」
「べ、別に。そんなことねーよっ」
プイ、と顔を逸らす牛奥。
もう、本当、なんでこんなに分かりやすいんだろうか、この男は。
吹き出したいのを必死に堪える莉央。
頑張って口元を引き締めてから、「ねぇ」と再度声をかける。
「このままじゃ取られちゃうかもよ?」
「っ!」
牛奥がカバッ!と物凄い勢いで振り向いた。ついに堪えきれず、ぶ、と吹き出してしまう莉央。