甘い恋じゃなかった。





慌てて社内に戻り、USBを取り出すと、踏んづけられて真っ二つに折れていた。
これは…もう、どうしようもない。


目の前が真っ暗になった。時計を見ると、午後6時半…。



明日のプレゼンがはじまるのは午前10時。




今からやったって到底間に合うはず…いや、間に合わせるしかない。せっかくもらったチャンス。そう簡単に諦めてたまるか!




しかし、それから三時間以上が経過した午後10時。俺の心は真っ二つに折れていた。



やっぱり無理だ…今からやったって間に合うはずない。



一人になった社内で、俺は机に突っ伏する。



仕方ない。やるだけのことはやったさ。ただ、俺には縁がなかったってだけ…



言い訳を並べて、なんとか逃げ出そうとする自分を正当化しようとしてた。そんなとき。




「あれ、牛奥?」




顔をあげると、同期の小鳥遊明里が入口から覗き込むようにして俺を見ていた。




「どうしたの?具合でも悪い?」




同期何人かと飲みにいったことは数回あったが、こうして二人きりになるのは初めてだった。




「いや…そんなんじゃねぇけど」



しかし今の俺は、「最近どう?」なんて世間話をする余裕すらない。



素っ気なくそう答えると、何か感じたのか俺のデスクまでやってきた。




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