甘い恋じゃなかった。
水と米を鍋に入れ、火にかける。
シンプルな卵粥にするつもりだ。
コプコプと、米が水を吸い込んでいく音がする。
それを聞きながら、目線は自然と、ぐっすり眠り続けている桐原さんの方へ。
…ぶっ倒れるまで、私を必死に探していた桐原さん。
SNSで私の最寄駅を割り出し、三日三晩張り込み続けた桐原さん。
私の最寄駅は住宅街の中にあって、決して利用客は少なくない。その中でいつ現れるかも分からない私を探し出すのは、なかなか至難の技だろう。
…執念を感じる。
絶対に私に会うという執念。
それはすなわち、お姉ちゃんの居場所を絶対に突き止めるという執念。
…お姉ちゃんは。
一年前、散々考え続けて結局答えは出なかったけど、でもやっぱり考えずにはいられない。
お姉ちゃんはどうして
桐原さんを残して、いなくなったりしたんだろう。