甘い恋じゃなかった。
そして数十分後。
私と桐原さんは近くのスーパーにいた。
「弾力があって重いもんを選べ」
慎重にレモンを選びながら桐原さんが言う。
そして桐原さんが選りすぐったレモンをカゴにいれお会計を済ました。
ふぅ、これでやっと帰って紅茶が飲める。
一安心してミルフィーユの方に歩き出そうとすると、
「おいどこ行くんだよ?」
桐原さんの怪訝そうな声が飛んできた。
「え?どこってミルフィーユに戻ろうかと」
「アホか。もう一軒行くに決まってんだろ」
「もう一軒ですか!?」
「当たり前だろ。師匠の命令は一人で持ち切れないほどの大量のレモンだぞ。全然足りない」
そしてレモンが入った袋を片手で持ち、颯爽と歩いて行く桐原さん。
くっ…。今度この借りでタダでミルフィーユのケーキ食べさせてもらおう。私は心に決めた。