甘い恋じゃなかった。
「じゃぁ~こっちのTバックにする?」
「じゃぁって何!じゃぁって!絶対嫌だし!」
次々と卑猥…じゃなかった、セクシーな下着を手に取っていく莉央とさりげなく距離を取る私。
「いつまでもそんなこと言って。
いつまで、そんなお子サマパンツ履いてるつもり?」
莉央が呆れた顔をして、じ、と私の下半身に視線を注ぎながら言った。
まさか透視されてる…!?
「明里がこんな調子なら仕方ないね。桐原さんもムラッとこないわけだ」
「べ、別に桐原さんにムラッとなんてして欲しくないし!」
「へぇ~?ドキッとかされたくないんだ?」
「されたいわけないでしょ?」
「じゃぁ逆に、明里はないわけ?桐原さんにドキッとしたこと」
「あるわけ…」
答えかけてふと浮かんだ。
“目つぶってみれば?”
雨の日。駄菓子屋の軒先で。
ゆっくり近づいてくる桐原さんの顔と、強くつかまれた手首の感触と…
「あるんだ?」
莉央がニヤ、といやらしい笑みを浮かべた。
「い、いや、な、ないよ!?」
「明里嘘下手すぎ。
わかった、じゃぁこっちの網タイツも買っとく!?」
「はぁ!?」
そんなわけで、結局一番はじめに手に取ったセクシーランジェリーを買うはめになった私であった。(Tバックと網タイツは断固拒否した)